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Channel: 中村 仁 | アゴラ 言論プラットフォーム
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不祥事の処分は民に辛く官に甘く政には大甘

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罰則がないのに社長辞任

東北新社(放送関連事業など)のが二宮清隆社長、総務省幹部多数の接待問題の責任をとり、辞任しました。さらに執行役員2人が解任、菅首相の長男は部長職を解かれ人事部付けになりました。

社長が辞任となった東北新社 NHKより

これに先立ち、総務省側も局長ら2人が更迭(官房付)、さらに7人が減給、2人が戒告、残り2人は訓告などの処分を受けました。利害関係者からの接待に相当し、国家公務員倫理規程違反ですから当然の措置です。

私が気になるのは、国家公務員倫理規程(国家公務員倫理法)は「利害関係者が費用を負担する接待などを禁止」しており、その対象者は国家公務員です。違反行為に対し、戒告、減給、免職、停職などの懲戒処分を科すことになっています。

接待した民間企業側に対しては、罰則の規定はありません。あくまでも「国家公務員は利害関係者から接待などを受けてはならない。違反したら処分を科す」、つまり官に対してだけ禁止行為、処分を定めています。それなのに社長が辞任とは、なぜだろうと考えこみます。

もっとも、利害関係者が多額の接待、金品の贈与などを官に対して行い、贈賄罪に該当すれば、刑法で処罰される。今回は東北新社に首相の長男(関連会社の取締役兼務)が勤務し、首相の存在を多分に意識して、接待を受けていたとみられ、贈収賄を問うまでは至らないようです。

とにかく、倫理法の対象外である企業の社長らが引責辞任し、倫理法の対象者である官側の処分が甘いという不均衡を感じる。対象外であるはずの社長が辞任したのは、放送事業の許認可権を握る総務省との関係悪化を懸念し、将来、不利益が生じないように、けじめをつけたかっためでしょう。

引責辞任の動機はそうであっても、今回のケースも「不祥事に対する制裁は民に厳しく、官に甘い」という日本社会の慣行の典型です。

今回の接待で最も多額だったのは、山田真貴子内閣広報官(接待当時は総務審議官)の7万4千円です。菅首相は山田氏を更迭するつもりはないと、されています。内閣広報官という首相側近のポストについているために、目立つ。なんとも間の悪い話というレベルの問題でしょう。

間の悪さという点では、社長が辞任、内閣広報官が月給の6割を自主返納という対比です。「社会的制裁や処分は民に厳しく、官に甘い」の流れから続けると、「政治家には大甘」という社会的な構図になっている。

一例をあげると、小渕優子衆院議員が自民党選対委員長代行という要職に最近、復帰しました。吉川元農相が議員辞職(収賄罪で起訴)したのに伴い、その後釜になる人事です。

小渕氏は政治資金収支報告書への不記載(1億円以上)、証拠のハードディスクの破壊(秘書らが起訴)が批判されました。経産相を辞任(2014年)し、「第3者委員会を作り、調査結果を公表する」と約束したのに果たさず、しばらく表舞台から遠ざかり、世論が忘れた頃の再登場となりました。

政治家は事件を起こしても、世論が忘れるのを待って、再浮上のチャンスを狙う。大甘の社会です。首相の長男が絡む不祥事に首相周辺が激怒した結果が社長辞任でしょう。火元のはずの首相は「大変申し訳ない」と、陳謝することで幕引きのようです。「処分の序列」はなんともおかしい。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2021年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。


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